#163 番外編2 Webサイト発注の教科書:Webサイトの適正価格は?50万と500万で決まる「思考の価値」

Webサイトの値段。
いくら必要?いくらかかる?
【3つのフォーカス】
1.価格の真実: Webサイトの価格差(50万円 vs 500万円)は、「ページ数」ではなく、「成果に向けた思考」と「専門家の責任範囲」の差である。
2.投資の論理: Webサイトの年間運用費を、「新入社員1人分の人件費の1/5以下」と比較し、投資がいかに合理的かを証明する。
3.無責任な意見: 専門外のコンサルタントや知人の「異常に高い」という言葉が、なぜWeb制作の構造を理解しない「暴論」であるかという根拠。
=====================================================【キーワード】#Webサイト適正価格 #Webサイト相場 #制作費の内訳 #思考コスト #年間運用費 #投資対効果の基準 #外部コンサルタントの意見
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~50万円と500万円のサイトで、あなたは「何」を買っているのか~
Webサイト制作・運用において、最も多くの疑問とトラブルの元になるもの、それが「費用」に関する話です。
・「Webサイトの相場を知りたい」
・「30ページのWebサイトを作るのに、50万円という制作会社と500万円という制作会社がある。これ、どういうことなの?」
多くの企業が、この価格の差に納得できず、コンペで最も安価な提案に飛びついてしまいます(第5回「Web制作相場とコンペの罠」)。
しかし、私たちが最も懸念するのは、Web制作の構造を理解しない、無責任な外部意見によって、専門家の仕事が「ぼったくり」と断じられ、プロジェクトが崩壊することです。
今回は、Webサイトの費用を巡る誤解を解き、Webサイトを持つ企業が年間で「いくら」使うべきか、その費用の本質に迫ります。気になりますよね。

Webサイトの「相場」が怪しい理由:
「作業費モデル」の限界
Webサイト制作の相場を検索すると、「中小企業向け Web サイト制作費:30万円~100万円」といった金額がよく出てきます。しかし、この安価?(と思うか、そうじゃないと思うか…)な相場は、Webサイトがかつての「印刷物(名刺やチラシ)」と同じように依頼されているという、構造的な誤解から生まれています。
かつての依頼イメージ:
顧客が「チラシ作っておいて、原稿と写真は渡すから」と依頼するような、「素材ありき・作業費ベース」の依頼。
制作パッケージの正体:
オプション付きで料金明快な「制作パッケージ」は、一見すると分かりやすいですが、見方を変えれば、「私たちは、お客様の戦略やビジネスの本質には立ち入らず、言われた通りの作業(オペレーション)あるいは仕組みの提供だけで、料金をいただきます」と宣言しているのに等しいのです。
制作の素材は発注側が用意し、制作会社は「どう見た目を整えるか」に限定されます。これでは制作費は、ほぼこの作業費(オペレーションフィー)だけで成り立っているため、安価に見えるのです。
とはいえ、それでも高い!と考える人は、自社のWebサイトがどういう目的をもつものなのか?何を達成しようとしているのか?と考えてみるきっかけにしてみてはいかがでしょう?それを考えるきっかけにしてみても損はないはずです。
この「作業費=Webサイト制作費」という認識にこそ、大きな問題があります。なぜなら、Webサイトは、単に「見た目」を整えて終わるものではなく、「コンテンツ(情報)」の力でビジネスを動かし、常に変化し続ける「生きた自社媒体」(第4回「準備不足」)だからです。
Webサイトは「モノ」ではない。
「未来への投資」
Webサイト制作の費用を巡る最大の落とし穴、それはWebサイトをある種の完成された「モノ」として捉えてしまうことです(第2回「放置されたWebサイト」)。
Webサイトの費用は、単なる制作物への対価ではありません。それは、制作会社が持つ「知識」「経験」「技術」に加え、あなたが持つ「思考」や「アイデア」を形にするための、「将来のビジネスを育てる投資」なのです。
Webサイトを、あなたの会社の「よくできる若手社員」として考えてみてください。
初期構築の費用は、その若手社員を採用し、研修を受けさせるための初期費用。
運用費用は、彼に支払う毎月の給料や、活動費です。
Webサイトという「社員」は、初期構築費こそかかりますが、運用ベースになれば、ひとりの人間の給与の1/3、1/5の費用で済みます。そして、彼は24時間365日、文句も言わずに働き続けます。気を遣うことも圧倒的に少ない。
Webサイトを持つということは、会社の組織の中に、総務や経理といった部署が増えるように、「自社媒体を運営する」という新しい役割を持つ部署を立ち上げることと同義です。
制作価格の差は「思考コスト」の差
Webサイトの初期構築費は、その戦略的な深度や複雑な連携を含めば、50万円から1,200万円程度までが中小企業の現実的な(比較的よくある)ラインです。では、なぜこれほどまでに価格差が生まれるのでしょうか。結構こういうことありますよね。
価格に差がつくのは、あなたが「何を」求めているか、そして制作会社が「どこまで」思考と責任を負うか、という「思考コスト(頭を使う費用)」の差です。
| 価格帯のイメージ | あなたが「買っているもの」 | 期待される成果 |
| 50万円クラス | オペレーション費用。 テンプレート利用、発注者自身が企画・ディレクション、コンテンツ執筆。制作側は概ね「言われた通り」の作業のみ。 | 短期的な情報開示、名刺代わり。事業貢献は期待薄。 |
| 500万円クラス | 戦略・協業の投資。 企画、構成、ターゲット分析、デザインロジックの構築、運用コンサルティング。制作側は「成果を出すための 一定の責任」を負う。 | 長期的なブランド構築、売上・採用への貢献。投資対効果を見込める。 |
恐怖の現実:
専門外の意見と素人の自己判断
私たちが最も懸念するのは、この価格構造を理解しない、先のなんとなくの価格相場を信じたような無責任な外部意見によって、Webサイトへの適切な投資が妨げられることです。
経営者が、Web制作の構造を理解しない「外部の知人」や「専門外のコンサルタント」から「そんなに高い費用はあり得ない。異常だ」という助言を受け、プロジェクトを停止させる事例も結構あるわけです。
第三者の意見を聴け!とはよく言われることでそれは重要なことだと思います。しかし、これは高い!といってこの外部の人が、別の安い会社を紹介したりするような場合はちょっと立ち止まって考えても損はないでしょう。もうおわかりですよね…。案外あるんですよね。
この背景には、「Web制作の費用=作業費(オペレーションフィー)」という誤った認識があります。
1.「ディレクション・翻訳コスト」の無視:
お客様が素人考えで「ここをこういうプログラムや構成にすれば安くなるのでは?」と持ち出しても、制作会社は実装できるかどうか?と調査、構成図の修正、調整まで行います。この実際に制作する側と発注側との「翻訳と調整」こそが専門家の仕事であり、最も高価な部分です。ディレクションや企画構成まで含めれば、まともな制作会社に依頼して数十万円で済むわけがありません。
2.他業界のWebサイトリテラシー問題:
金融業界やIT業界がWeb投資の重要性を理解しているのは、彼らがデジタルからお金を生み出しているからです。そしてお金を生み出せる方法を早くに確立したということでもあります。
しかし、それ以外の業界の企業は、Webサイトの重要性を常に「時期尚早」だと捉えがちです。そしてやらない理由を一生懸命考えてしまったりします(やる理由を見いだすのは大変です。でもやらない理由はいくらでも出せてしまうのはご存じの通り)。
そして、その間に、旅行業界やタクシー業界のように、まったく関係のない業界から突然デジタルをフル活用した参入があり(「デジタルディスラプター」というそうです)、業界全体が崩壊するリスクを、経営層は真剣に考えるべきなのです。
Web投資を渋ることは、静かに沈没していく(いや、ある日突然!ということも)ことになります。

新しい役割:
Web戦略アドバイザーの必要性
Webサイトの高度化、DX/AI時代の到来、そして既存の依頼形態の限界(SIerへの丸投げ、価格競争)を考えれば、今、Web制作には新しい役割が求められています。
それは、単なるWebデザイナーやコーダーでも、企業の経営コンサルタントでもない、「Webサイトが関わる領域における、デジタルの事業戦略アドバイザー」です。(なかなかそんな便利な人多くはないんですけどね)
中小企業こそ、以下のような専門家を「参謀」として活用し、Webサイトへの適切な投資を行う方がいいでしょう(第3回「なんか違う」)。
・制作会社選びの基準を設定してくれる
・Webサイトの戦略を、ビジネスモデルに合わせて整理してくれる
・技術的なリスクと費用の本質を、社内に翻訳してくれる
→Web Operations Advisor
「費用」に惑わされないための、たった一つのこと
Webサイトの費用は、決して安価なものではありません。だからこそ、私たちは「価格」に惑わされることなく、その本質を見抜く必要があります。
安かろう悪かろうで「買って」おしまいにしているのが一番もったいない使い方です。
継続運用することで(よって運用費は必ず頭に入れておきましょう)ちゃんとWebの価値を引き出し、ビジネスに貢献するようにしましょう。
放置したら、お金を使って会社に損害を与え続けてしまうというなにやってんのかわかんない事態になってしまいます(そういうところも多い)
Webサイトは「モノ」ではなく「サービス」
Webサイトの費用は「コスト」ではなく「将来のビジネスを育てる投資」
Webサイトの成果は「PV」ではなく「目標への貢献」
この三つを理解したとき、あなたはWebサイトを「ただ存在するだけの箱」から、「成果を生み出し続けるビジネスの資産」へと進化させる、最初の一歩を踏み出すことができるでしょう。無駄なお金の使い方をしていないか、「投資に見合うベネフィットを得られるようになっているか」を、今一度よく考えてみてはいかがでしょうか。
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【Webサイト発注の教科書】

上手に発注し、良好な関係を築き、
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「制作会社に任せたのに、なぜか成果が出ない」「費用ばかりかかって、サイトが会社の『お荷物』になっている」—この問題の根源は、Webサイトの技術ではなく、発注者側の「無意識の誤解」と、制作現場の「構造的なすれ違い」にあります。ちょっと長めの文章ですが、10回プラスαで書いてみました。Webサイトを構築、運用していく際に、役立つ、愉しめる。そして、しくじらないためのノウハウです。
